腫瘍マーカー


1.腫瘍マーカーとは

腫瘍には多くの種類がありますが、中には腫瘍マーカーと呼ばれる、その腫瘍に特異的な物質を産
生するものがあります。そのような物質のうち、体液中(主として血液中)で測定可能なものが、いわ
ゆる「腫瘍マーカー」として臨床検査の場で使われています。


2.腫瘍マーカーの種類

現在、数多くの腫瘍マーカーが臨床の場で使われています。また、日々新しい腫瘍マーカーが開発
され、臨床応用を待っています。さらに、すでに確立された腫瘍マーカーでも最新の研究の結果、別
の腫瘍においてもマーカーとなり得ることが明らかになる場合があります。このような多くの腫瘍マー
カーについて個別に解説することは無理ですので、臨床の場で多くの人に認められ確立された腫瘍
マーカーの一部を図と表に示しますので参考にして下さい。





腫瘍マーカー



腫瘍マーカー名 省略名
α-フェトプロテイン AFP
糖鎖抗原125 CA125
癌胎児性抗原 CEA
サイトケラチン19フラグメント CYFRA
エラスターゼ I ElastaseI
NCC-ST-439 NCC-ST-439
神経特異エノラーゼ(NSE)精密測定 NSE
PIVKAII PIVKAII
ガストリン放出ペプチド前駆体 ProGRP
前立腺特異抗原 PSA
扁平上皮癌関連抗原 SCC
シアリルLex-i抗原 SLX
シアリルTn抗原 STN
ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ分画コア定量 βHCG



3.腫瘍マーカーの役割について

腫瘍マーカーは、進行した悪性腫瘍の動態を把握するのに使われているのが現状であり、早期診
断に使えるという意味で確立されたものは残念ながらまだありません。腫瘍の動態を把握するとは
治療効果を判定するという意味です。例えば、進行した悪性腫瘍に対して化学療法や放射線療法
が行われている場合、その治療がどれくらい効果があるかを判断することに使われています。また
腫瘍マーカー値が高い腫瘍に対して手術による悪性腫瘍の切除が行われると、多くの場合、腫瘍
マーカー値は手術後、低下もしくは改善します。しかし、悪性腫瘍の再発に伴い、腫瘍マーカー値
は再度上昇してくるので、術後の経過観察目的で使われることもあります。


4.腫瘍マーカー値の解釈について

腫瘍マーカーのカットオフ値(しきい値)は、多くの人(正常人、及びその悪性腫瘍罹患患者)の測
定値をもとに決められています。ところが、中には多くの人の動きとは異なる動きをする人もいます。
すなわち、悪性腫瘍が存在しないにもかかわらず腫瘍マーカー値が上昇している場合や、悪性腫
瘍が存在するにもかかわらず腫瘍マーカー値が上昇していない場合があります。また、腫瘍マーカ
ー値自体の動きも正確に悪性腫瘍の動きを反映しているわけではありません。例えば、値が5上昇
したからといって、5だけ悪性腫瘍が進行したわけではありません。


5.まとめ

腫瘍マーカー検査を依頼する医師は、漠然と検査を依頼しているのではなく、その患者さんの個々
の状態に基づいて検査を依頼しているのであり、腫瘍マーカー検査のどこに注目しているかは、患
者さんごとに異なると考えた方がよいといえます。

腫瘍マーカー検査は、他の検査と同じく、診断を最終目的とした多くの検査のひとつとして行われ
ているのであり、診断そのものは、血液検査、画像を用いた検査、身体所見などを総合的に勘案し
て医師が行うものです。したがって、決して腫瘍マーカー値の上下のみで悪性腫瘍の存在、病態の
悪化、及び回復を判断できるものではないことを理解して下さい。極端にいえば、医師がそこから
情報を得られるならば、体重や顔色さえも広い意味では腫瘍のマーカーたりうるともいえるのです。

腫瘍マーカーについて疑問がある時は、その検査が患者さんにとってどのような意味があるかにつ
いて、検査を依頼した医師との十分な話し合いが必要です。



      

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複写・引用承認済み
掲載日:1996/05/23
更新日:2007/07/10